たとえば、と言うそのときに、たとえられなかった無数のものたちを感じるから、僕は永遠に存在から離れられず、永遠に僕のままだった、きみのみちたりている顔を見る、そのときにだけ純粋でいられたなら。
ぱちん、と日常が弾ける音がして、その隙間から光が差す、刺すときにこそ存在があり、生きているがあって、だからかみさまは存在しない、ぼくだけを見て、とまぶしくはちきれそうなわがままを言えたなら。
そこにいないことがきみの存在を引き立たせていて、ぼくはそれをいつまでも覚えていられるくらい賢くなりたかった、さみしさの代替品としての甘さと危うさ、永遠に語られることのないもの。
僕のもの、といえるものが世界にはあまりに少なすぎる、そのことに気づいてからきみのことを軽々しくかわいいねと言えなくなった、夕立のあとの夏の匂い、ぼくはいつまでもありきたりで、いつまでも特別。
神崎琴音
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